パーソナル薬膳ダイエット茶プログラム

“美味しい”と“楽しい”で健康に。薬膳料理を届ける堤内杏奈さん インタビュー vol.1

ライターの紗矢香です。

日々の食事は慌ただしく終えてしまうこともある。食べ物を時間内に掻きこんで、さっさと次の仕事に向かう。だからといって、「食に関心がない」ということでもない。

倒れるわけにはいかないから。毎日を乗り切るため、身体に良いと言われれば手当たり次第取り入れる。

それでも、その場しのぎの栄養ドリンク片手に仕事をこなし、一息つくとやっぱり思う。

「美味しいご飯を、ゆっくり食べたい。」

ただ“食べるだけ”では満たされない。じっくりと噛み締めて“食材”を“食べる時間”を、味わいたいときだってある。

休日の土曜日、食事会に行った。「株式会社薬膳の極み」が主宰する、薬膳料理が食べられる食事会だ。会場に入ると、そこに並べられていたのは食事というより、まるで“アート作品”だった。

キッチンペーパーが敷かれたテーブル一面に広がる、彩り豊かな野菜のお料理。飾りのお花と一緒に一品一品が丁寧に置かれてあり、デコレーションの文字にはお味噌が使われている。

こんな素敵なお料理を提供するのは、フードコーディネーター/フードデザイナーである堤内杏奈さん。杏奈さんは薬膳料理の開発や宅配を株式会社薬膳の極みから委託されている。

「お皿の上じゃなくて、机の上に料理が並んでいる?!」

「ケータリングでお野菜がこんなに食べられるの?!」

お客様からは“新しい感じ”が楽しいと感想を頂くことが多いのだとか。

「皿洗いなど片付けの手間を省いて、食べながら話せる時間が長くなるように」

「まんべんなく配置することで、おとりわけを気にしなくてもすむように」

といった考えから、今の料理提供のスタイルになったそうだ。

“美味しくて、楽しい空間”は、「工夫」と「想い」でつくられていた。

食と向き合えば、生活を見直すことにつながるから、自然と「生きること」と向き合うようになる。

今日は何を、誰と、どこで、どんな風に食べようか?

毎日の何気ない食事を豊かなものにするためには、食べるまでの過程を知ること、大切にすることだと杏奈さんから教わった。

健康の大切さを、求めている人に伝えたい。

--見て楽しい、食べて美味しい、素敵なお料理の数々ですね!杏奈さんは普段、どんな方にお料理を提供されているのですか?

ありがとうございます。私はもともとイベントなどでケータリングをしていました。ですが、コロナの影響でイベントが中止となって仕事がなくなったため、同時並行で行なっていたアスリートや経営者の方への食事サポートをメインにシフトしていきました。農家さんの野菜で料理をつくり、全国に郵送で届けています。

アスリートはサプリメントを摂ることができないため、全て食事で栄養を補わなくてはいけません。なので、食事による効果や結果がとても重要になってきます。

もちろん、食事を1日変えたからといって、次の日に試合で勝てるわけではないので毎日の積み重ねで結果が見えてくる感じです。

たとえば、私が提供する食事を1年間食べ続けた女性のサッカー選手は、その期間中、チームの中で唯一ケガがなく、メンタル面でも安定して過ごせたとご報告頂きました。

これは食事による結果を出せた一つのケースになるのかな、と思います。

経営者はアスリートよりも食事によるパフォーマンスは見えにくいですが、大きな変化としてよくおっしゃるのは「(食べ物で)選ぶものが変わった」ということです。

私が食事を送ることで、「自分は健康になるためにこれを買っているんだ」と、意識するようになるそうです。「今までお菓子を買っていたけどやめよう」「外食ばかりだったけど、回数を減らそう」というように、食生活の習慣が変わる方がいます。

また、経営者には食事に加えて、私が知っている知識をお伝えするようにしています。食事に気をつけることで「病気を予防する考え」を身につけて頂きたいので、がん細胞ができる原因や、サラサラの血液になれる食べ物は何かなど、具体的な話をしますね。

たとえ、1週間の食事でその人にとって一番良い影響を与えられなかったとしても、食事に対しての意識を変えることができれば、その人の一生に関わってくる。私がそこを担えれば、と考えています。

堤内杏奈(つつみうち・あんな)

アスリート向けフードや経営者向けの健康フードの提供や、オンラインの栄養セミナーなどを開催。健康をテーマに活動を広げている。2020年1月より合同会社nhnunmを設立。nhnunmはニャニャムと読み、カンボジア語で笑顔の意味がある。

--もともと料理を作るのは得意で好きだったのでしょうか?

きっかけは、ホームパーティーでした。大学生の頃、飲みに行ったり、カラオケに行ったりするお金がなかったので、私は家に友人を呼んで手料理を振る舞っていました。

大学で上京して一人暮らしをしていたのですが、大学の勉強をしつつ、簿記のスクールにも通っていて、アルバイトをする時間がなかったんです。

友人たちは私の料理を食べて「美味しい」とすごく褒めてくれたので、それで料理が好きになりました。

それから簿記のスクールが終わって、アルバイトができるようになってからは、料理教室を掛け持ちで通いだしました。

日本食、中華料理、家庭料理などいろんな料理教室に通いましたね。ただ、グループで調理する形式で習うと、家に帰ってから実践できない場合が多くありました。料理も凝ったものだと家でつくるには難しくて。

そのうち「こんな感じだったらいいのにな」と私が思う料理教室をやりたくなったんです。大学卒業後、営業の仕事をしながら土日を使って料理教室を始めました。

--最初は営業職と料理教室の二足のわらじだったんですね。そこからどうやって料理の道に切り替えられたのですか?

3年くらい料理教室をやっていたら、健康的な食事はニーズがあるとわかってきたのでグルテンフリーの教室に変えました。

そのうちパーティーやイベントで出すお弁当をつくってほしいと依頼が入るようになり、主軸はケータリングへ移っていきました。

楽しかったのですが、その頃はまだ営業の仕事もしていたので、全然休む日がありませんでした。平日は夜中まで会社で働いて、頻繁に飲みに行ったりもしていました。

そんな状態でも健康はやっぱり気にしていたので、朝早くからジムにも通っていて。睡眠時間は3時間ほどでした。生活はめちゃくちゃでしたね。

当然ながら肌の調子が悪かったり、生理痛がひどかったり、身体にすごいしわ寄せが来てしまいました。

営業の仕事も大好きで、もとから会社でバリバリ働くのが当たり前と思っていた私でしたが、さすがに「何のために働いているんだろう・・・」と思い直すようになったんです。

振り返ると、周りにも忙しい人がたくさんいました。忙しいと食べることが疎かになって、コンビニ食ばかりになってしまうことってありませんか?料理教室をやっていた私自身でさえ、忙しすぎると毎日何を食べたらいいのかよくわかりませんでした。

そんな忙しい人たちがよりパフォーマンスを上げるために、私ができることって何だろうと考えたとき、やっぱり私は「料理」だと思ったんです。

ケータリングのお客様も増えきた頃だったので、会社を辞めフリーランスでケータリング事業を始めました。

その後は、先ほどお話ししたアスリートと経営者の食事のサポートも同時並行でやるようになり、身体が資本で健康に対する意識が高い方に向けて、健康の大切さを伝えています。

奈良への移住で得られた“自分の時間”

--ところで、杏奈さんは東京から奈良に移住されたのですよね?きっかけは何だったのでしょうか?

農業に興味が出てきたのが、きっかけの一つです。半年間、農家さんに無農薬野菜を送って頂き、食べていました。その野菜が本当に美味しかったので、そのうち、無農薬野菜を使ったメニューを考えたり、茨城の農家さんの野菜づくりを手伝うようになったんです。

野菜が出来上がる過程を知ることで、料理をつくるときの意識が変わりました。雨や天候に影響を受けながらも、3ヶ月間大切に育ててきたものが、こうして食べられる野菜になったと思うと感慨深いです。野菜の価値が私の中でこれまで以上に高まりました。

そうなると、気持ちひとつで野菜の使い方が変わってくることに気づいたんです。野菜の芯や皮が簡単に捨てられなくなって、みじん切りにして使ったりするようになりました。

芯や皮まで丁寧に扱っていると、後々調べてみたらキャベツの芯や人参の皮はとても栄養があると知り、「自然にできているものを、『ちゃんとそのまま食べる』のが一番良いんじゃん」というのもわかりました。

農家さんのところに定期的に通っていると「自然に戻るのが一番理にかなっている。人間らしいリズムの生活なんだ」と自分の中で腑に落ちて、「私が自然体で居られる場所は、“ここ”かもしれない」と思えてきたんですよね。

ちょうど「畑作業をやってもいいよ」と言ってくださった、奈良の農家さんとご縁があってつながれたので、それも移住を決めた一つの理由でした。

--奈良に移住してみて実際の生活はいかがでしょうか。

久しぶりに東京に帰ったとき、友人から「顔つきが優しくなった」と言われました。昔は「生き急いでいる」と言われるくらいだったので、切羽詰ったキツイ顔つきだったんだと思います(笑)。

東京にいた頃は自律神経の乱れがあって全然寝られませんでした。自分の会社を設立したばかりのところにコロナ禍になり、ケータリングのお仕事がなくなって、いま思うと不安とプレッシャーの日々を過ごしていました。

それが奈良に住んでからは寝られるようになって、朝、目覚ましなしでも起き上がれるんです。お仕事の状況がすぐに変わる訳ではありませんでしたが、「何もできないことには変わりなくても、目の前の小さなことから始めよう」と思えるようになりました。

友人もいなくて一人で住み始めましたが、朝日や夕日が眺められて、落つける静かな場所だったこと、都会に比べて電磁波の影響も少ないことが良かったのかもしれません。

奈良に来てからは、外食が減り、質の良い食材で自炊する生活を送っているので、身体の調子もさらに変わってくると期待しています。

あと一番大きく変わったのは、「私の夢って何だろう?」と自分のことを考える時間が増えたことです。

今はSNSで人の投稿を見て羨ましくなったり、外に意識が向きやすくなる時代だと思いますが、一人の時間が多くなったことで、自分の内側に意識が向けられるようになりました。

自分が大切にしていきたいものは何か、人生をどうしたいのかをよく考えて、自分のやりたいことに集中できるようになったのが良かったです。

自然な流れの中で生きる。ご縁がある人に役立てることを。

--“健康”をテーマした活動は幅広いと思いますが、これからどんなことをやっていきたいですか?

やりたいことは色々あるのですが、先のビジョンよりも、“今”を大事に生きたいと思っています。

私がやりたいことで一つ言えるのは、料理をつくる以上に、みなさんと「美味しいね」と言いながら食べる「楽しい空間」をつくることです。

そして、私自身が成長していくことで、食べる人により良い食事を提供できるようになることが一つの目標ではあります。

活動の規模は小さくても良いので、ご縁がある人にきちんと届けていきたいですね。

たとえば、「このお茶、美味しそうだな」と思ったら自然と手に取るじゃないですか。そんな風に私の料理を選んで頂きたいです。無理のない、日常の流れの中で自分の役割を果たすのが自然体でいいなと思っています。

また、私自身が良い状態で料理をすることは意識しています。私が不健康で辛そうにつくっていたら、美味しくないものが出来上がると思うんですよ。野菜にもそれは伝わってしまって、食べてもらう人に失礼だと思うので。

まだいろいろと勉強中ではありますが、どんな気持ちで食べるか、どんな気持ちでつくるのかは、料理の味や栄養に影響を与えると科学的にも証明されつつあるそうです。

だからこそ、「食べたい」「これを食べて健康になる」という気持ちを持っている方に料理を届けたいと思っています。そういった方であればより効果や結果が現れやすいですし、美味しいと感じていただけると思います。

投稿者プロフィール

紗矢香
紗矢香ライター
豊かな働き方と暮らしをテーマに執筆活動を行う。これまでは、使命感を持って活動されている個人事業主を中心にインタビューを実施。想いや生きざまに自然と表れるその人の魅力や世界観を記事で発信してきた。感性を豊かにすることで、社会に新たな循環を生み出す取り組みに興味があり、アート思考や伝統文化を学んでいる。